補助資料:焙煎における熱3種類
焙煎では、熱がコーヒー豆に伝わります。
その熱の種類は大きく3つあります。
対流熱とは?
対流熱とは、流体の動きによって物体に熱が伝わる現象です。
焙煎機の中では、加熱された空気(熱風)が勢いよく豆に当たり、表面から内部へ熱が浸透していきます。
- 例えるなら:ドライヤーで髪を乾かすとき、温風が髪に当たって乾くのは「対流熱」。
- 焙煎機では、送風ファンが強いほど、熱風による加熱効率が高まります。
- 数式で表すと: $$ q = h (T_{\infty} - T_s) $$ $h$(熱伝達係数)は、風速や豆の大きさで決まる値です。
伝導熱とは?
伝導熱とは、物体同士が直接接触して熱が移動する現象です。
焙煎機のドラムの金属面に豆が当たると、金属の温度が豆に伝わります。
- 例えるなら:フライパンの上に置いたパンケーキが、直接の接触で焼けていくのが「伝導熱」。
- 焙煎では、ドラム式の場合、金属壁と豆の接触時間・頻度によって伝導熱の寄与が大きくなります。
- 数式で表すと: $$ q = k \frac{\Delta T}{L} $$ $k$(熱伝導率)は、材料の性質(空気より金属が圧倒的に大きい)で決まります。
放射熱とは?
放射熱とは、赤外線(電磁波)によって物体間に熱が移動する現象です。
真空でも伝わるのが特徴で、焙煎機の内部では加熱されたドラム壁や炎が赤外線を出し、豆に熱が届きます。
- 例えるなら:焚き火の前に手をかざすと、空気を介さずにじんわり温まるのが「放射熱」。
- コーヒー焙煎では寄与は小さいですが、炭火焙煎などでは独特の風味に影響を与えると考えられています。
- 数式で表すと: $$ q = \varepsilon \sigma (T_s^4 - T_{\infty}^4) $$ $\varepsilon$ は表面の放射率、$\sigma$ はステファン=ボルツマン定数です。
まとめ
- 対流熱:熱風 → 豆表面に衝突して加熱
- 伝導熱:金属面 ↔ 豆の直接接触で加熱
- 放射熱:赤外線による加熱(寄与は比較的小さい)
実際の焙煎では、これら3つが同時に作用し、焙煎機の設計や操作でそのバランスが変わります。
特に対流と伝導が支配的であり、放射熱は条件によって補助的に働きます。