コーヒー抽出におけるTDS・PEとコーヒーチャート#5
1. TDSとは何か?
定義
TDS(Total Dissolved Solids) とは、「液体中に溶け込んでいる固形分の総量」を指します。コーヒー液中にどれだけ成分が溶け込んでいるかをパーセント(%)で表します。
例:TDS 1.30% → コーヒー液のうち1.30%がコーヒー成分、98.70%が水。
測定方法
- 屈折計(リフラクトメーター)を使用して光の屈折率を測定し、TDS値に換算する。
- 単位:パーセント(%)
影響する要因
- 抽出時間
- 温度
- 粒度(挽き目)
- 湯量
- 使用する豆量
2. PEとは何か?
定義
PE(Percent Extraction)は、「コーヒー豆中に存在していた可溶性成分のうち、どれだけがお湯に取り出されたか」を示す割合(%)です。
例:豆に100gの可溶性成分があり、20gを抽出できたなら、PE = 20%
PEを変化させる要因
- 粒度(細かいとPEが上がる)
- 抽出時間(長いとPEが上がる)
- 温度(高いとPEが上がる)
3. コーヒーチャートとは何か?
TDS-PEチャートの概要
コーヒーチャートは、横軸にTDS、縦軸にPEを取り、抽出結果を視覚化するためのグラフです。
- バランスの取れた味わい:Ideal Zone(適正抽出領域)
- 抽出不足:Under Extraction(酸っぱくシャバシャバした味)
- 抽出過多:Over Extraction(苦くえぐみの強い味)

チャートの読み方
- TDSが高い → 濃厚な味わいになる
- PEが低い → 成分が十分に抽出されず、浅い味わいになる
- PEが高すぎる → 苦味や雑味が強調される
Idealゾーン、Under、Overとは
- Ideal Zone:甘み・酸味・苦味のバランスが良い領域
- Under Extraction:薄くて未完成な味わい(TDS・PE共に低い)
- Over Extraction:苦く重たい味わい(TDS・PE共に高すぎる)
4. まとめ
- TDSは「液体の濃さ」を示す指標。
- PEは「豆からどれだけ成分を取り出したか」を示す指標。
- コーヒーチャートはTDSとPEのバランスで味のゾーンを把握するためのツール。
- 最新の研究では、温度や粒度に関係なく、最終的なTDSとPEが味わいを決定することが分かってきている。
次回は、さらにこの考え方を発展させて、UC Davisの最新研究をもとに成分ごとの味わいについて詳しく解説していきます!
📚 参考文献
- Jonathan Gagné, Physics of filter coffee, 2020
- Guinard, Jean‐Xavier, et al. "A new Coffee Brewing Control Chart relating sensory properties and consumer liking to brew strength, extraction yield, and brew ratio." Journal of Food Science 88.5 (2023): 2168-2177.